組織化、春闘・一時金交渉、調整事件

事件の概要
  • 集団的労使紛争の内容及びユニオンの要求事項

    組織化、春闘・一時金交渉、調整事件(あっせん)

  • 会社の業種及び規模

    飲食業チェーン店 従業員数500名(うちパート400名) 拠点数30ヶ所

  • 組合概要及び組合員

    最大手上部団体を持つ中国地方のユニオン 公然化した組合役員4名 その他非開示

  • 紛争内容

    20XX年1月X日 中国地方のある県で飲食店を30店舗展開しているオーナーさんから、3ヵ月前に会社内に労働組合が結成され、上部団体から団体交渉を何度も求められており、そのまま放置していたら、団体交渉に応じないのは不当労働行為であるので〇〇県労働委員会に申し立てすると書いてあった。どう対応したらいいのかわからず相談に来られた。

解決までの道のり

竹内01竹内

・・・なるほど、状況はおおむねわかりました。
ところで、今日は中国地方から遠路お越しいただきましたが、どなたかからのご紹介でしたか?

社長01社長

はい、今回の件が発生して、顧問の税理士さんに相談してみたら、竹内先生の著書『会社を守るユニオン対策が2時間でわかる本 (自由国民社)』を紹介されまして、この本を読んで、是非とも先生にお願いしたいと思って連絡しました。

竹内02竹内

あ~、そうだったんですか。
自画自賛するわけじゃありませんが、おかげ様で皆さんとてもわかりやすいと、言ってくださるんですよ。

社長02社長

サラッと一気に読めました。竹内先生がとても経験豊富なのがすぐに分かったので、これはもう竹内先生しかいないと思い、その場でお電話した次第です。

竹内03竹内

ということは、ユニオン関連の経験は初めてということでよろしいですか?

社長03社長

はい、まったく初めての経験です。これまで労働組合なんて気にしたこともありませんでしたから、もう右も左もわかりません。

竹内04竹内

不安になられる気持ちはよくわかります。皆さん同じです。
それではこれからユニオン対応のポイントを説明しますね・・・。

ユニオン対応が初めての場合、相談にいらっしゃる経営者の皆さんは、大なり小なり不安を滲ませている。
この先どうなってしまうのか、将来がまったく見えないのだから、不安に思うのは当然の話だ。
まずは、安心してもらうためにも、今後の対応ポイントを説明する。

  1. 会社にとって団体交渉は、労働組合との打ち合わせであること
  2. 実務的には、事前にユニオンから通知された要求事項に端的に回答すればよいこと
  3. 要求通りにできなければ応じられない理由を回答すればよいこと
  4. ユニオンが会社の回答に納得できないと反論してくるケースがあるが、そこまで法的に求められないこと
  5. 会社は、団体交渉に誠実に応じること
  6. ユニオンからの要求事項に対して、説明責任を果たすこと
  7. 会社の考えを明確にユニオンに回答すること

これらを理解していただければ、相談は終わったも同然である。

併せて、この上部団体は、会社に労働組合を作ること。つまり、組織化が目的であることを説明した上で、会社にこのユニオンの目的に関してどう思うかと聞いたところ、間髪入れずに「うちには労働組合は要りません。」ということであった。

本件について、ご依頼いただけるとのことであったので、会社からユニオンとの書面でのやり取りを数回繰り返しながら、第1回目の団体交渉を迎えた。

第一回目の団体交渉を開催

会場は、会社所在地近くのホテルの会議室であった。

通常、会場費は会社持ちであるが、今回はユニオンにどんな思惑があるのかユニオン持ちで、しかも、ホットコーヒーまで用意されていて、協議は穏やかに進んだ。

ユニオン担当者01ユニオン担当者

会社と友好関係を築かなければ、労働組合も存在できません。
今後は昇給に関して、春闘、一時金について、それぞれ夏と冬の団交を定期的にやりましょう。

ユニオン担当者02ユニオン担当者

組合員の不平、不満、不安をうまく会社に伝えますので会社も安心です。
苦情処理機関としても組合は役に立つんです。

ユニオン担当者03ユニオン担当者

業務命令をする側と従う側の関係だけでなく、労使協議の場を設けましょう。
うちの組合にはいろいろな会社の労働組合が加入しているので、御社に宴会や食事会をご紹介できます。

いやはや、なんともおいしい話しのオンパレードだ。
無言でこの労使協議というプレゼンテーション聞いていると、登場人物こそ違えど内容はいつも同じ、きっとマニュアル化されているものと思われる。

上部団体の担当者が、会社内に労働組合を組織化するという自分の仕事を、一番簡単に達成するためには、トップと友好関係を築くことが近道であり必須だ。

しかし、このノウハウは難易度が高いため、習得している担当者はほとんどいない。

したがって、会社の対応がつれない場合、すぐに諦めてしまうケースもよく見受けられる。

(暫定)労働協約が欲しくてたまらない!

(暫定)労働協約

この上部団体は、会社やそのトップとの友好関係が築けていない状況にもかかわらず、いつも先走って「(暫定)労働協約」を出してきては、会社に締結を求めて来ることが常だ。

「(暫定)労働協約」とは、ユニオンが自由に労働組合活動をするために会社と締結する、ユニオンにとって素晴らしい契約のことで、おおむね以下のようなことが書いてある。

  1. 仕事をせずとも、就業時間中および会社施設内で労働組合活動を行える自由
  2. その労働組合活動中の賃金保障
  3. 掲示板、労働組合活動する事務室、電話、FAX、ビラ用の用紙、備品等の便宜供与
  4. 従業員以外の組合員の会社内への出入り自由 等々

会社が得るものもあるが、通常、ユニオンへの便宜供与が大きく上回る内容になっている。

(暫定)が付こうが無かろうが、「労働協約」であり、「確認書議事録」の名称であっても、このような書面に労使双方で署名・捺印すると、固い約束が成立するので、くれぐれも慎重にご判断されたい。

公然化しないことで自ら不都合な状況を創り出す!?

団体交渉をその後何度か継続したが、(暫定)のままで何ら締結できない状況が続いたため、組合員も組合費の負担が重荷なのか、何だか元気が無くなってきている。

(暫定)労働協約が結べれば、その中でチェックオフ協定という組合費の給与天引き制度が実現し、組合費徴収という嫌な仕事が無くなるのだが、このままだと集金を続けなければならない。

ユニオンショップ協定も結べないので、「従業員であればみな組合員」という勧誘の切り札が無く、加入を増やす作業が難しくなる。

公然化

春闘や夏冬の団交では、いつも協議が進まない。

なぜなら、誰が組合員であるのかをユニオンが明らかにしないためだ。(明らかにすることを「公然化」という。)

ユニオンは団体交渉に際し、組合員の労働条件の維持向上しか基本的に要求することはできない。

非組合員の処遇についても、組合員の処遇に関係するため協議可能だと拡大解釈してくることが多いが、会社が応じる義務はない。

組合員の数が不明ということは、会社は組合員の昇給原資や賞与予算(ユニオンは、賞与のことを「一時金」と呼ぶ。)を、算定やシミュレーションすることすらできない。

ユニオンは「組合員の氏名を明かすと、不利益取り扱いされるので明かさない」と言うが、当該事業場を含む全社的にみて、少なくとも過半数、本来であれば3/4以上組織化していることを条件にしなければ、昇給や一時金の交渉など、到底無理な話である。

36協定の締結についても、この上部団体では、過半数と主張する事業場でも氏名を明かすことはしない。

これまで当職は、「会社に労働基準法第32条や第37条違反をさせてしまうリスクを生じさせていることをどのように考えるのか?」この点について、何度も強くこの上部団体に是正を求めているが、一向に改めようとする気配すらない。

本来、昇給や一時金について、組合員についてはユニオンと団交を行うが、非組合員については会社が定めて従業員に通知することになる。
ユニオンとして氏名を明かさない従業員には、組合員か否かがわからないため、当然ユニオンとの妥結ではなく、非組合員と同様の昇給や一時金が支給されることになる。

これではユニオンにとっても不都合だと思うのだが、氏名をオープンにしない理由は、組織化が進まず、過半数も取れてないのが現実だからだと考えるのが相当であろう。

これらの点をユニオンがどう考えるかについては、支配介入になるのでコメントしないが、最大手の上部団体であれば襟を正し、正々堂々と公然化し、仮に会社に不当労働行為があったとユニオンが評価したなら、事前に数回、注意改善を求め、それでも改善しないのであれば、地方労働委員会へ「不当労働行為救済申立」をすればよいと考える。

組織化が進まないと良い評価がもらえない!?

意味がない

2年間に渡り、春闘、夏冬の一時金交渉を協議したが、妥結は毎回、非組合員と同額であった。

組合員からすれば、「何だ、組合に入っても一緒か~!?」ということになるだろう。

ところで、上部団体の担当者は、組織化が進まないことには、所属組織から良い評価をもらうことができない。

そこで、一か八か、これまでの「太陽作戦」から「北風作戦」に変更してくる場合がよくある。

つまりは、業を煮やして力でねじ伏せにくるわけだ。

例えば、団体交渉の促進や不誠実団交だと主張して、労働委員会に申し立てるぞ!という、最後の北風を吹きかけてきたりするのだ。

北風と太陽

この時、会社はどう判断すべきか?

答えは簡単で、労働組合とどう向き合うのかという原点に立ち返り、普段通り堅実に判断することになる。

地方労働委員会で「調整事件(あっせん)」と「不当労働行為救済申立」のどちらをユニオンが選択するかだが、この上部団体においては「調整事件(あっせん)」を選択することになるであろう。

なぜなら、もう一つの「不当労働行為救済申立」は、当該ユニオンはあまり経験したことが無く、対応することができないからだ。

大都市圏以外の労働委員会には、年間で1、2回程度の申し立て件数しかないのが実情である。
ただし、これが東京都や神奈川県の場合では、多くの合同労組(ユニオン)が、当たり前のように申し立てをしているため、状況が少し違ってくる。

このケースでは、やはり労働委員会へ「あっせん」が申し立てられたが、労働協約の締結には至らず、3回目で不調となり打ち切りとなった。

その後、ユニオンの執行委員長は退職した。団体交渉の申し入れも無くなった。

上部団体の担当者は、組織化がうまくいかず、「あっせん」申請しても現状を打破できなかったので、組織にも自分が作ったユニオンにも言い訳できなくなり、関与を諦めたのであろう。

真偽の程は不明だが、その後、ユニオンの労働組合活動は無くなった。

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