整理解雇対象者の退職金の加算要求
企業経営者様および経営者側の立場の方へ
組合対策は迅速かつ専門的な対処が必要です。少しでもお困りの際にはお気軽にご相談ください。
- 集団的労使紛争の内容およびユニオンの要求事項
整理解雇対象者に対する退職金の加算要求
会社の資産状況がわかる資料の提出要求
残業代の未払い、未消化有給の買い取り要求、代休等の未清算部分の支払い要求 - 会社の業種および規模
地方の老舗建設会社 従業員数70名
- 組合概要および組合員
連合系の地方ユニオン 土木事業部に所属する従業員12名
- 紛争内容
社長が、専務である長男に代を譲るに際して、不採算部門である土木事業からの撤退を従業員に表明したところ、代替わり等に不満に思っていた土木事業に所属していた古参幹部が、周辺の土木事業担当の社員11名を巻き込み、20XX年12月X日付で労働組合を結成し、外部の連合系ユニオンを上部団体にして、会社に団体交渉を申し入れてきた。
解決までの道のり
組合の要求事項を見ると、整理解雇を撤回すること、もし撤回できないならば退職社員に対して以下の事項を要求してきた。
- 建退共で支払われる退職金以外に、割増加算金として退職者1名につき平均賃金の24ヵ月分を支払うこと
- 会社は有給休暇および代休の未消化分を買い取ること
- 会社は過去2年分の未払い残業代を支払うこと
- 会社の資産状況がわかる資料を組合に提出すること
このような内容となっており、組合の要求する金額を合計すると、おおむね1億2,000万円にも達するほどの要求であった。
社長と専務は、労働組合と団体交渉など行った経験はなかったが、話せばわかってもらえるものと思い、年が改まった1月に第1回目の団体交渉を行った。
第1回目の団体交渉
その団体交渉では、社長や専務が、不採算の土木事業を撤退せざるを得なくなった背景や事情を誠実に説明したのだが・・・
そのような理由では整理解雇はできない!
整理解雇の4要件に該当しない!
社長の今の発言は、典型的な不当労働行為だ!
激しく罵倒されたが、社長や専務にしてみれば、初めて聞く「専門用語」が飛び交い、特に「不当労働行為」など、さっぱり意味がわからなかった。
しかし、組合からは一方的に今回の会社の行為を非難され、
整理解雇を撤回するのか!
それができないなら退職社員に組合の要求するお金を支払え!
それもできないというのなら、会社の資産内容が分かる資料を次回団体交渉までに組合に提出しろ!
などと、一方的に要求を突き付けられた。
このような1回目の団体交渉を経た後に、ホームページで当協会を探し出され、相談のために1月Y日に来社されることになった。
社長と専務は、今後の対応方法がわからず、先行きへの不安で、途方に暮れた様子であった。
労働組合について何も知らないんで、今後どうすればよいかまったくわかりません。とは言え、とても組合の言う、あのような要求には応じることはできない!
もしそうならば、会社を潰すしかない!
わかりました。 いろいろ詳しくお聞かせいただきましたが、御社はこの問題をどう解決したいとお考えですか?
会社存続のためにも整理解雇は避けられません。
ですが、退職者にはできる限りのことはしたいと考えています。
ただし当然限度もあるので、組合の要求通りにすることはできません。
今回のケースでは、会社の望む解決のためには、やはりある程度の金銭が必要となる旨を説明した上で、その場合の予算はどのくらいを考えているのかもヒアリングした。
そして、会社が希望する予算内で本件が解決するかについては、今後のユニオンとの協議次第であることなどを伝えた。
第2回目の団体交渉
2月X日 第2回目の団体交渉から当協会も参加して交渉が始まった。
そして、退職金については、外部積み立てで掛けていた建退共等は別払いではなく、このような事態に備え準備していたものであって、解決金に含むべきものであること。
残業代については、固定残業手当で支払っていたこと等を主張した。
組合は会社の主張に同意することなく、協議は平行線のままであったが、最後に会社としては、次回の団体交渉までに何らかの解決案を提案する旨表明をした。
その際に組合は、次回団体交渉の日程をこの場で決めることを要求してきたが、会社は解決案の検討にどのくらいの時間が必要であるのかわからず、次回の団体交渉の日程については、改めて組合から書面で申し入れるようにと、この場での日程設定要求に最後まで応じなかった。
第3回目の団体交渉
3月U日 組合から3回目の団交の申し入れが来た。3月V日の開催で応じる旨の回答書を作り組合へ送った。
なお、次回の団交に社内の組合員12名全員が参加する予定である旨の記載が組合の申し入れ書にあった。
この点について会社は懸念し憂慮していたが、当協会は、「組合側の出席者に会社が干渉することは基本的にできない。もし、会社の社員である組合員が不規則発言や社長と専務を罵倒するようであれば、組合側に抗議し状況によっては団体交渉を終了し、退席するので心配は要らない。」旨を説明した。
そして、第3回目の団交が開催された。
事前に会社と打ち合わせをした通り、前回の第2回目の団交を踏まえ、会社側としては、建退共からの退職金の支払いとは別に、基本給の3ヵ月分を解決金として支払う旨を提示した。
そんな回答じゃぁ検討に値しないッ!
会社にはまだ全体として見れば資産に余裕があるはずだッ!
余裕がないというのであれば財務諸表等を提出しろ~ッ!
そんな大声でエキサイトされても、とても組合の要求には応じられません。
このまま決着がつかない場合は、やむを得ず3月末で、土木事業部の社員である組合員は、全員解雇とせざるを得ません。
もし、整理解雇となれば、会社は1ヵ月分の解雇予告手当の支払いが必要となるが、組合員はそれが不満となれば、訴訟等を提起して長期戦を覚悟する必要が生じてくる。
この場で解雇を通告すれば、解雇予告手当は1ヵ月分に満たない金額だ。
じゃぁ、12ヵ月分の解決金まで譲歩するけど、これでどうだ!
その解決金には、残業代の未払等のその他の要求に対する解決分を含むと考えてよいのですか?
本来は、残業代等の未払金等については、別途徹底的に争うつもりだったけど、整理解雇の期限も迫っているし、組合員の生活もあるんで、次の就職も考えなければならないから、会社の回答によっては含めることも考えなくもないけど。
わかりました。検討の時間が必要です。
改めて検討後に会社から文書で回答させていただきます。
会社は検討後に改めて回答することになり、この団体交渉は終了した。
ここまでの段階で解決金の金額は、建退共以外に会社の支払いは基本給の3ヵ月分という会社側提示に対して、組合側は会社側支払い分として12ヵ月分を要求するとの提示額となった。
その後3月W日に、当協会において、会社と組合への解決金の金額について打ち合わせをした。
その結果、3ヵ月分から4ヵ月分に1ヵ月上乗せをした金額を提示することにして、組合にかかる内容の回答書面を送付した。
すると組合からは、「その水準では未だ組合員を説得できる水準ではない。」という回答があり、合意は得られなかった。
会社は「このまま交渉が平行線をたどった場合、やむを得ず3月X日付で組合員を解雇する。」と改めて組合に書面で返答した。
組合が地方労働委員会へ「あっせん」の申請
3月Y日 突然、○○県労働委員会の職員であるA氏から会社に連絡があり、「組合からあっせんの申請があり、あっせん制度の説明と、双方の言い分をヒアリングしたいので会社に訪問したい」とのことであった。
東京では絶対にこのようなことはないが、地方の労働委員会では、わざわざ職員があっせん制度の説明のために会社に訪問することがある。
A氏は、3月Z日10時に来社されることになり、会社から当協会への同席を依頼されたため同席した。
話しは、あっせん制度の説明と、会社の認識している事実経過のヒアリングで、何の変哲もないものであった。
遂に整理解雇を実施!
会社は予定通り、3月X日付けで整理解雇を実施した。
その後、組合から、解雇通知書の返送の件でFAXが送られて来て、解雇通知書の受け取り拒否ということで原本も送り返してきた。
しかし、組合のこの行為によって、会社側としては、解雇通知書は少なくとも先方に到達して、その内容も解雇通知書ということを各組合員は了知した。
従って、解雇は成立したと確認するに至った。
組合係争中の思わぬ収穫
4月X日 この日に、1月X日に開催された土木事業の閉鎖に関する全体会議後の個人面談で、会社の方針と労働条件の変更に不満があるので辞めたいと申し出た土木事業部以外の社員から退職に関する相談があった。
1月X日の全体会議後、組合に加入したかどうかは不明であったが、有休の未消化分と代休の買い取り、失業保険の申請に対する配慮等をしてくれたら、おとなしく退職すると言ってきた。
組合と係争中でもあるため、どう対処したらよいかという相談が社長から当協会にあった。
当協会では、その社員は組合員であると確認した人物ではないが、組合と交渉している最中なので、退職に応じるにしても、退職解決金は組合への提示の範囲内にすることなどをアドバイスした。
その後、およそ3.5ヵ月程度の解決金を支払うことによって、その社員は合意して退職した。
この社員は、以前から会社にとってとても問題のある社員だったようで、組合と争うの中で生まれた出来事であった。
第1回目のあっせん期日により解決の方向へ
4月Y日 第1回目のあっせんの期日があった。
会社は今までの経過を説明し、会社側の考えている解決金が基本給の4ヵ月分である旨を表明するなど、種々のやり取りを経た後、あっせん委員から基本給の6ヵ月分の解決金という案が提示された。
会社は、その解決金に残業代等が含まれるのか否か、また、金額を下げられる余地はあるのか、組合側ではその案をどう考えているのかを会社側のあっせん委員と話をした。
結局、あっせん委員の尽力と説得もあり、基本給の5ヵ月分に残業代を勘案したプラスアルファを支払ってくれるなら妥結してもよいという話しが組合側から示された
しかし、そこで制限時間一杯となり、次回期日である5月X日に解決は持ち越しとなった。
第2回目のあっせん期日にて無事終結!
5月X日 第2回目のあっせん期日があった。
この期日までに、会社と当協会は打ち合わせを行っており、解決金が当初から会社の考えていた射程の予算水準に入ってきているので、基本的には和解する方針を決めていた。
組合は基本給の5ヵ月分に残業代を勘案したプラスアルファという主張を繰り返したが、会社は4ヵ月分が限界だと主張し、双方譲らないまま時間が経過した。
結局、あっせん委員から、間を取る形で4.5ヵ月分の提示が出て、これにて和解、決着となった。
当初、組合からは、建退共からの退職金とは別に、平均賃金の24ヵ月分+未払い残業代等の支払いという要求であったが、結果は建退共からの退職金とは別払いとはなったものの、一方で基本給の4.5ヵ月分でプラスアルファなしとなり、総額で見ると6分の1以下まで解決金は下がり、会社の安堵する結果で終了となった。
お困りの際は、いますぐ無料電話相談をご予約ください!
※ 本サービスは、企業経営者様および経営者側の立場の方専用となります。