普通解雇撤回の要求
企業経営者様および経営者側の立場の方へ
組合対策は迅速かつ専門的な対処が必要です。少しでもお困りの際にはお気軽にご相談ください。
- 集団的労使紛争の内容及びユニオンの要求事項
普通解雇撤回の要求
- 会社の業種及び規模
老人保健施設 従業員数50名
- 組合概要及び組合員
東京都のユニオン 勤続2年の男性介護職員 賃金22万円/月
- 紛争内容
20XX年12月X日 就業時間中に本来の業務を放棄して、許可なく会社の設備や備品を利用してビラの作成や印刷を行い、施設内へ無断で貼り付けるなど、企業秩序を著しく乱す組合員がおり、注意しても猛烈に反抗する始末で、現状、業務が滞る事態にまで至り、当該組合員の処遇について大変困っているという社長と、女性の施設長が相談に来られた。
解決までの道のり
就業時間中に業務そっちのけで、勝手に会社のパソコンやコピー機でビラを作成して、無断で施設内に貼り付けたりするもんですから、何度か注意したんですが、「正当な労働組合は認められている。邪魔すると不当労働行為だ!」と逆切れされる始末で手に負えないんです。」
それはとんでもない従業員ですね!よくここまで我慢してきましたね。
労働組合についてよくわからないので、好きにさせていたんですが、他の職員とか入居している方やその家族からも、内々に彼の言動について度々クレームが寄せられるようになって、それで思い切って相談に来たんです。
従業員には職務専念義務があるので、就業中に会社施設内で会社の許可を得ない勝手な労働組合活動はできないんですよ。
そして、企業秩序遵守義務もあります。
これらを乱す言動に対しては、注意指導という改善チャンスを与え、それでも改善が見られなければ懲戒処分をすべきですね。
ユニオンとかに、何をされるかわからないので、怖くて今まで何もできなかったんですよ。
何も怖くないですよ。恐れる必要なんてまったくありません。
それで、社長さんはどうされたいんですか?
すぐに辞めてもらいたいと思ってます!
会社には、過去に口頭では注意指導を重ねているが、懲戒処分をしていない点については、この場合不利であることを伝えた。
また、ユニオンの近くには通常、弁護士がいるので、従業員としての地位確認の争いが発生した場合には、労働審判事件や訴訟事件として、火が付く可能性が高くなることも伝えた。
しかし、労働審判事件で約70%、訴訟事件で約50%の地位確認の争いが、4ヵ月から12ヵ月程度の期間で、退職和解という金銭を会社が支払うことで終了している。
当社の現状は、労働統計の確率から考えれば、現状維持は、会社と他の従業員、および入居者の被る不利益が、解決コストとリスクを明らかに上回るので、会社は外科的な手段を選択せざるを得ないとの結論に至った。
普通解雇やむなし!
ユニオンは街宣活動を通じて、ビラ配布、拡声器による騒音で周辺に迷惑を掛けたり、SNSで会社や個人を誹謗中傷する名誉棄損行為を正当な労働組合活動と称して行う可能性が強くあることや、当該業種の特殊性としてこれらユニオンの活動による経営上の支障度も検討する必要性を伝えた。
今回は、違法な労働組合活動をしている組合員の処遇なので、法的な対応を行う必要があるため、最初から弁護士さんに委任することを助言した。
すでに会社では顧問弁護士に相談していて、過去に3回、顧問弁護士に団交に同席してもらったようだが、特に発言もなかったようだ。その弁護士先生からは、「労働問題は専門ではない」と言われている。
また顧問社労士は、社会保険手続き専門であって、個別労働紛争や、ましてユニオン関連は知識も経験もないので、団交への出席も断られたそうだ。
無理もない話だ。労働法やユニオン関連を専門に取り扱う専門家は非常に少なく、希少な専門家のほとんどは東京にしかいないのが現状だ。
当協会の顧問弁護士は、使用者側専門であり、もちろん労働事件を専門に取り扱う法律事務所である。
そこで、社長および施設長と共に、後日、当協会の顧問弁護士事務所を訪問し、事件の受任をお願いにお邪魔した。
顧問弁護士の先生のご意見も、『普通解雇やむなし』であった。
解雇通告の現場!
20XX年2月X日 早朝6時30分、会社最寄りの駅改札口にて2人の弁護士さんと待ち合わせをした。
7時15分の始業時間開始と同時に、普通解雇の申し渡しをするためである。寒い。
なぜなら終業時間後では、会社の命令に従わずに帰宅されてしまう恐れがあるため、始業直後に開始するのだ。
会社に到着し、社長と打ち合わせを済ませた後、朝礼の終了直後に当該組合員を呼び出した。
弁護士が解雇通知書を読み上げる。本人は最初、訳が分からず聞き入っている。
そのうち「解雇なんて認めない!」「不当解雇だ!」「不当労働行為だ!」と叫びだした。
そして、朝の掃除を始めた。バケツに水を入れ、トイレ掃除のブラシをその水で濡らし便器をこすり始めた。
その間、弁護士は、解雇通知書を追いかけながら読み上げていく。私ともう一人の弁護士も追随した。
彼はトイレから出ると、食堂や他の施設を回りながら、不規則発言を繰り返している。
社長に対しては「おまえら資本家が飯を食えるのは、我々労働者が食わせているんだ!」
大声で叫びながらガスに火を付けたり、掃除機を持ち出したりしている。
弁護士は用意したA4用紙15ページにおよぶ解雇通知書を、淡々と約2時間程度で読み上げた。これで普通解雇成立だ。
次に弁護士は、解雇予告手当をキャッシュで差し出した。しかし、組合員は受け取らない。
押し問答の末、彼はちょっと電話すると言って、スマホからどこかに電話した。
その後「明日以降の給与として、これは受け取る。」と言い、受領書にサインしてキャッシュを受け取った。
これで労働基準法第20条(解雇予告義務)もクリアした。普通解雇の成立だ。
社長と弁護士から、当該組合員に対して、施設から即刻退去を求めたが、かたくなに出て行かない。不退去罪だ。
すぐに110番だ。警察官が3名やってきた。このようなケースでは、警察官が来たら通常は退去することになるだろう。しかし彼は、「民事不介入だろう!」と叫んで出ていこうとしない。
警察官が説得をするが、それでも出ていかない。
警察官は一度帰り、会社と弁護士が退去交渉を継続するが、相変わらず言うことを聞かない。
再度、110番。今回は4名だ。
そうこうしているうちに1人の女性職員が進み出て「あんた、男らしくないよ!今日のところは帰んなさい!」と一喝した。その直後、彼は、渋々ながら外に出た。
その日以降、約1ヵ月程度、会社の外でユニオン3名が、解雇撤回を叫んでいた。最初のうちは週5日だったものが、週3日、そして週1日となり、最終的には無くなった。
完全に紛争を終結させるため、会社から団交を文書で申し入れた。しかし団交当日、ユニオンは現れなかった。
次に、地方労働委員会に対して、使用者である会社からあっせんを申し立てた。
ユニオンからあっせんに応じると地方労働委員会に回答があり、期日が決定した。
あっせん期日当日、当職も会社や弁護士と、地方労働委員会に補佐人として参加したが、団交同様、連絡もなくユニオンは現れず、当然これにて打ち切りとなった。
さらに会社は、労働審判で「従業員の地位の不存在」を申し立てた。
しかし、これにも応じて来ないので、会社の主張通りの審判が下され、異議申し立てもなかったことで、彼との紛争は完全終結となった。
彼を支援していたユニオンからも、その後は何の音沙汰もなく、実質個別労働紛争、名目集団的労使紛争もまとめて無事に終結した。
会社は、リスクを検討し、普通解雇を決断し、リスクを取って実行し、問題を解決した。
この、問題解決の本質を理解したことで、決断できたとのだと考えている。
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