労働組合の争議権

日本国憲法では勤労者の団結権、団体交渉権と並んで団体行動権を保障しています。(第28条)


労使双方の主張に隔たりがあったり、歩みよりができず、団体交渉が行きづまり進展がみられなくなったときに、これを打開するための手段として争議行為を実施することは、この団体行動権の行使と考えられます。(争議権)


争議行為は、同盟罷業(ストライキ)、怠業、作業所閉鎖(ロックアウト)、その他労働関係の当事者(使用者と労働組合等)が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいいます。(労調法第7条)


そもそも争議行為は、集団的実力行使によって使用者の営業を妨害し、あるいは使用者の労働契約上の権利や施設管理権を侵害するものですから、一般的な市民法秩序においては違法とされるはずのものです。


しかし、憲法28条(勤労者の団結権)、労組法1条2項は及び8条(損害賠償)は、争議行為が「正当なもの」であるれば、労働者および労働組合は民事上・刑事上の責任を免責されると定めており、なおかつ、労組法7条は不当労働行為からの保護を定めています。


逆に、争議行為が正当性を欠く場合、不法行為に基づく損害賠償が可能となります。


この場合、請求される損害賠償は、操業がストップしたことによる逸失利益、違法争議の結果の原状回復費用、操業継続のための特別な費用、操業再開のための出費などが考えられます。


具体的には以下の事例があります。

  1. 違法なピケッティングによって当該スト期間の売上が減少し、9,771万余円の利益を失ったという会社側の主張に対し、東京地検はピケ・ストが無かったと推定される売上額と現実の売上額を算定し、これが会社側の請求額を超えるという判断から、請求額全額を損害とみとめた。(東京地裁 H4.5.6)
  2. ビラ剥がしおよびビラ剥がしによって受けた壁の損傷の修繕・清掃費用(東京地裁 S50.7.15ほか)
  3. 炭坑の違法争議により出炭が行われなかったが、それにもかかわらず出費を余儀なくされた生産費用(東京地裁 S50.10.21)
  4. タクシー会社における建物占拠・エンジンキー保管等の違法争議によって損傷を受けた車輌の原状回復費用(名古屋高裁 S61.1.24ほか)
  5. 納豆製造会社における違法争議により発生した凍納豆の製造工程にあった仕掛品の腐敗・品質低下などの損害(長野地裁 S42.3.28)
  6. 違法な荷役ボイコットによって発生した待機人員等報酬相当額、夜間荷役作業割増料金相当額、傭船料および燃料代相当額、船内夜間荷役作業関係費相当額、港費関係相当額の損害(東京地裁 H10.2.25)

最高裁は一貫して、違法争議によって経営秩序を乱した場合には、労働組合のみならず、個々の組合員に対しても懲戒処分をなし得るという判断を下しています。

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