団体交渉の事前準備

ここでは、団体交渉を行う前に、事前に決めておく必要がある、場所や、日時、人員、交渉事項などについて、細かく解説します。

労使間のルールが重要

最初の団交は特に慎重に

団体交渉申入書が届いたからといって、そこに記載された通りに、即、団体交渉に応じる法的な義務はまったくありません。

団体交渉では、労使間の慣行(ルール)が非常に重要視されますから、最初の団体交渉のやり方、つまり、団体交渉を行う場所や、日時、人員、交渉事項は、事前に必ず文書でもらうなど、十分に検討して、有利な条件を提示してから望むことが重要です。

たまたま最初の1~2回の取り決めたことが、「後々までのルールだ」などと、労働組合から主張されることになってしまう可能性がありますからね。

また、「そのルールを変えるには、合理的な理由が必要だ」などと主張されることもあります。

団体交渉のセッティング

団体交渉の場所

多くの場合、労働組合は、会社内の施設や会議室で団体交渉をするように求めてきますが、会社内の施設や会議室で団体交渉を行う法的義務はありません。

便宜供与の例外としては一部ありますが、基本的には会社内の施設を利用すべきではありません。

基本的に部外者との交渉ですから、会社施設外で行うべきです。

貸会議室

団体交渉の場所は、会社と労働組合とが協議して決めればよいのですから、必ずしも会社施設で行う必要がないことは、いうまでもありません。

もし、何度か会社内で行っていても、会社内の施設には余裕がなかったり、予定が入っていて利用できない等の理由を説明し、場所を変更することは可能です。

また、労働組合の事務所等の場所も、出席予定者以外の人が急に参加したり、予定時間を過ぎても延々と解放されないような可能性もありますので、労働組合の事務所も絶対避けるべきですね。

会社の施設や労働組合の施設では、終了時間がルーズになりがちですから、商工会議所の会議室や、公共の施設などを時間を区切って指定しても構いません。

いずれにしても、一度ルールになってしまうと変更するのは大変ですから、慎重に検討してください。

団体交渉の実例を確認する

団体交渉の日時

団体交渉の日時についてですが、労働組合の指定した日時で団体交渉を行う法的義務はありません。

労働組合が指定してきた日程で、会社側の都合が悪い場合は、早めに労働組合に伝えて日程調整をします。

所定労働時間内禁止

ただしこの場合、何週間も先の日程にするのは、団体交渉拒否だと主張される可能性がありますので、あまり先延ばし過ぎにならぬよう注意してください。

また、労働組合は、団体交渉を所定労働時間内に開催するように求めることが多いですが、所定労働時間内に団体交渉を開催する法的義務はありません。

労働組合の活動は、所定労働時間外に会社外の施設で行うのが原則です。

便宜供与の取り決めもなく、所定労働時間内に団体交渉を開催してしまうと、会社は、「所定労働時間内の労働組合活動を容認した」などと労働組合から勝手な主張をされたり、支払う義務のない組合員の「その時間帯の賃金を保証しろ」などといわれかねないからです。

トラブル防止と会社の不利益を防止するためにも、団体交渉は所定労働時間外に行いましょう。

団体交渉の出席者

労働組合は、団体交渉への社長や代表者の出席を求めてきます。
しかし、社長や代表者が団体交渉に出席する法的義務はありません。

団体交渉への出席者は、人事課長や総務課長であっても、社長や代表者と同じくらい労働条件などについて決定できる交渉権限を有する人であれば一向に構いません。

ただし、出席した者が、団体交渉の内容について、すべて社長に聞かないと分からないというのは、労働組合から不誠実団体交渉と主張されることもありますので、注意が必要です。

一般的に、中小企業では、要求事項の妥結権限や労働協約の締結権は、代表者が持つのが普通でしょう。

大企業ではあるまいし、従業員100人未満の会社の代表者は、なんでもやらなければ会社が存続しないことは、世の中で周知の事実です。

実際、代表者が団体交渉に出席できるほど暇な例はまれです。

代表者は、経営専権事項の遂行を最優先すべきであり、それが雇用責任を果たすことになります。

しかし、労働組合は、必ず代表者の団交出席を求めてきますが、先ほど申し上げた通り、法的義務などありません。

団体交渉の交渉事項

通常は、団体交渉の申し入れ書や要求書などに、団体交渉の交渉事項が記載されていますので、事前にじっくりと検討した上で対応することになります。

団体交渉事項

組合員の配置転換、出向、解雇、昇格・降格、休職、復職、懲戒などに関する基準手続きは、労働条件・待遇の基礎となるので、団体交渉事項(義務的団交事項)に当たります。

しかし、個別の組合員の昇進、昇格については、会社の専権事項であり、団体交渉事項ではありません。

もしこの点について要求してきた場合は、「団体交渉事項にならない」と労働組合に主張してください。

ただし、組合役員の資格に影響を及ぼすような昇進・昇格(管理職に昇進・昇格させて組合員資格がなくなる場合)に関しては、不当労働行為につながる場合がありますので注意が必要です。

労働組合は、これらの協議事項について、事前協議とか事前同意を、労働協約の締結を通じて求めることがよくありますが、止やめておいた方がいいでしょう。

なぜなら、会社は何をやるにしても、労働組合にお伺いを立てなければならないといった、おかしな状況になってしまうからです。

いずれにしても、団体交渉事項の判断は難しい部分もありますので、判断が付かない場合は、まずは無料電話相談にてお問い合わせください。

団体交渉の実例を確認する

お困りの際は、いますぐ無料電話相談をご予約ください!

03-6903-6656 (受付時間 平日9:00~17:00) 日本労使関係マネジメント協会
※ 緊急の場合は、即時電話対応可能!(労使関係コンサルタントのスケジュールで即時対応できない場合があります)
※ 本サービスは、企業経営者様および経営者側の立場の方専用となります。

執筆者プロフィール
JIRMS 日本労使関係マネジメント協会 代表 竹内 睦

竹内 睦

1996年12月社会保険労務士事務所を開設し、社長を守る会グループの株式会社アンカー、日本労使関係マネジメント協会の代表として、100%使用者側に立って人事労務コンサルティングを展開している。
これまで、合同労組(ユニオン)の集団的労使紛争関与先300社超、団体交渉同席延べ1,000回超、地方労働委員会の労働争議(調整事件および不当労働行為救済申立)事件の補佐人参加70社超の関与数に至る。

会社概要のページはこちら