団体交渉の基本的な留意点
ここでは、ユニオン(合同労組)と実際に団体交渉を行う場合の、使用者側の対応方法について、基本的な留意点を解説します。
要求内容に応じる義務はありません
要求内容を聴いてから慎重に対処する

団体交渉に応じる場合、使用者側は、交渉のテーブルについて、「まずは、労働組合の要求内容をじっくり説明してもらいましょうかね。」という態度で、誠実に交渉を行うことが義務なのであって、必ずしも労働組合の要求内容に応じる義務はありません。
具体的な対応方法としては、要求内容を聴いてから慎重に対処するといった姿勢でのぞんでください。
なぜなら、使用者側に、第一回目の団体交渉で労働組合側に回答しなければならないという法的義務は、まったく負っていないからです。
だいたい、筋のいい団体交渉であっても、3ヶ月から4ヶ月位かけて、3回から4回の団体交渉が行なわれて、最終解決に至るケースが多いものです。
ですから、使用者側は、社会通念上(一般常識的とでもいいますか)、十分な説明責任を果たすことが大事なのです。
交渉打ち切りもやむなし
文書のやり取りや団体交渉の場で、何度も(3回から4回位かな?)話し合い、どうしても双方の譲歩、歩み寄りが足りなくて、合意点に到着することができなければ、交渉打ち切りで仕方がないですね。

こんなときは、『デッドロック(交渉打ち切り)』を宣言します。
最初は、なかなかいえないかもしれませんが、慣れれば簡単にいうことができます。何事も慣れですわ。
だって、これ以上団体交渉してもしょうがないでしょう?
もし、このように団体交渉が決裂したとしても、この場合は団体交渉拒否ということにはなりません。
ですから、心配はいりません。
解雇した労働者の場合は、どう対応すべきか?
ユニオンが主張する理屈
解雇した労働者が合同労組に相談に行き、組合員となって団体交渉を申し入れてくる。これを『駆け込み』といいます。
さて、それでは、解雇した元従業員も合同労組も、会社とは無関係ですが、団体交渉に応じる義務は、あるのでしょうか?
もちろん、「法的に当然にある」とはいえません。
なぜなら、労使関係は、労働組合の団体性と雇用関係を前提としているわけであって、この『駆け込み』は、そのどちらでもないではないですか?

どうして、団体交渉を受けなければならないのかと聞くと、合同労組の理屈は、解雇された元従業員(当該組合員)が、この解雇は、不当な解雇であると解雇の効力を争っている以上、つまり、従業員としての地位がまだ消滅していないのだから、労働組合法第7条の二(使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。)を持ち出して、まだ使用者が雇用する労働者であるとの主張をしてきます。
また、労働組合とは、そもそもこれら解雇・退職などの労働契約関係の継続の有無や、未払い賃金・退職金など労働契約の精算等に関連する事項を解決することが使命であるとか、拡大解釈を主張します。
会社はすべて費用対効果で考える
でも、これらのことは、被解雇者と会社の個別的労使紛争であることは明白であり、法治国家の解決システムでは、話し合いで決着しなければ、労働局の個別のあっせんや労働審判があります。
つまり、最後は裁判所にいけばいいんですよ。
良識ある合同労組が個別的労使関係に介入することで、当該問題が早期に解決するのであれば、民事の紛争ですから、実務的には許せます。
でも、敢えて紛争を拡大させて、不当に組織拡大を図るとか、経済的利益確保のみを狙うような労働組合であれば、もはや問題解決の目的を逸脱しています。

そもそも、労働組合が、所属する当該組合員の問題で訴訟や仮処分の申請はできない領域の事項であれば、会社としては、最後ではなく、最初から、腕のいい労働法の専門の弁護士さんに相談し、訴訟することも検討すべきです。
私は私なりに判断し、これは悪い匂いの事件の相談がきたと思えば、即刻、当事務所の顧問弁護士の先生へ相談しますね(訴訟は弁護士しか行えませんから)。
ここで先生が受けていただけるかどうかは、一番の問題です。
私は、先生に必死に頼みます。
なぜなら、受けていただければ、それが当事務所のクライアントにとっては、一番よい解決方法だと確信しているからです。
彼らと関わる時間の無駄を計算すれば、一目瞭然です。
全て、費用対効果、つまり、コストの問題に置き換えることです。
組合からの脱退を説得してはいけません
労働組合から脱退すれば要求に応じるなどと、労働組合からの脱退を説得しようとしてはいけません。
これは支配介入として、労働組合から不当労働行為だと主張されてしまいます。
合同労組に会社を攻撃する材料を与えるだけで、その後の交渉がやりづらくなり、結果として不利になることがあります。
通常、ここだけの話とか持ちかけても、だいたい筒抜けになります。
なお、「支配」とは、労働組合の内部意思を左右することをいい(牛耳ること)、「介入」とは、左右する程度にまで至らないもの(お節介)といいます。
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執筆者プロフィール
JIRMS 日本労使関係マネジメント協会 代表 竹内 睦
1996年12月社会保険労務士事務所を開設し、社長を守る会グループの株式会社アンカー、日本労使関係マネジメント協会の代表として、100%使用者側に立って人事労務コンサルティングを展開している。
これまで、合同労組(ユニオン)の集団的労使紛争関与先300社超、団体交渉同席延べ1,000回超、地方労働委員会の労働争議(調整事件および不当労働行為救済申立)事件の補佐人参加70社超の関与数に至る。
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