労働組合の戦術
ビラが名誉毀損か否かを判断する基準
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ビラが名誉毀損か否かを判断する基準
労働組合活動の一環として配布されたビラの内容について、違法かどうかは、次のような基準によって判断されます。(エイアイジー・スター生命保険事件 東京地裁 H17.3.28)
- ビラで摘示された事実が真実であるか否か。真実と信じられる相当な理由が存在するか否か。
- 表現自体は相当であるか否か。
- 表現活動の目的、態様、影響はどうか。
ビラ配布に関する裁判例
正当な組合活動とした裁判例
正当な組合活動として、社会通念上許容される範囲内のものであると判断される場合には、違法性が阻却されることになります。
工場内の有毒ガスにより従業員が危険にさらされていること、工場廃液により地域の水稲に被害が生じていることなどを記載したビラを工場付近の住民に配布した。
これに対し、会社側は「名誉毀損、信用失墜」行為だとして、従業員を懲戒解雇処分とした。
従業員は、この無効を主張して、地位保全・賃金支払の仮処分を求めた。
裁判所は、従業員の申立を認容し、地位保全・賃金支払の仮処分を命じた。
通報した事実については、真実であると信じる合理的理由があり、当該通報が労働組合活動として認められる場合は、これを懲戒処分の対象とすることは、懲戒権の濫用となると判断している。
日本計算器蜂山製作所懲戒解雇事件 京都地裁 S46.3.10
労働組合が、会社の報道内容、報道姿勢へ批判、合理化反対等について抗議するビラを通行人に配布した。
会社は、「故意に会社の名誉を傷つけた」として、組合役員を懲戒解雇処分とした。
これに対し、従業員としての地位確認および未払賃金の支払を求める仮処分申請が行われた。
裁判所は、新聞が公衆に与える影響は多大であり、公共性を有するものである。したがって、事実に基づく企業内事情の暴露については、公益に関する行為として、受忍すべきである。本件ビラ記載の内容は、大筋において真実に合致するものであり、懲戒解雇処分によって臨むのは、懲戒における裁量の範囲を著しく逸脱したものだといえるので、本件懲戒処分は無効というべき、とした。
山陽新聞社事件 広島高裁岡山支部 S43.5.31
不当な組合活動とした裁判例
反対にビラ配布が不当とされた裁判例としては、以下のような事例があります。
解雇を争っている病院職員が、病院のモラルに反して労働者を解雇した等というビラを付近住民に配布した事案。
裁判所は、原告が、監督官庁に対して被告の不正を糾弾することはともかくとして、被告に不正行為があるとしてこれを付近住民等に流布することはなんら従業員としての正当な行為とはいえず、その必要性もないことであるし、前記ビラの記載内容は、被告の信用を害し、病院経営に悪影響を及ぼすことも明らかであって、被告からすれば許し難い背信行為というべきであり、懲戒事由ともなし得るものというべきであると判示し、これを理由とする賞与不支給を有効としている。
毅峰会吉田病院賃金請求事件 大阪地裁 H11.10.29
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